現実とのギャップをかみしめている

2011.10.20

「家という箱があり、必要と思われる部屋をそこに無理やり押しこめていく。そこではどんな生活シーンを実現し、どんな生活シーンをあきらめるか。おそらく家づくりとはこの選択のくり返しじゃないでしょうか」理想とする部屋を集めていく足し算の家づくりに対して、限られたスペースを部屋に区切っていく割り算の家づくりがある。そして、現実的にはほぼ一〇〇パーセント割り算の家づくりを人々は強いられるのである。わたしのこの考えに対して、プロジェクトチームのひとりはこう答えた。一つの部屋でどれだけ多様な生活場面を生みだせるか。わたしたちの提案の主眼はそこにあるんです。だから生活シーン分の部屋数が必要だという考え方とはまったく逆だといえる」購入後に子ども部屋を成長にあわせて仕切ることができるようにしたのもその一環である。空間の仕切りは等分にだけでなく、分割の割合を変えることもできる。そのために窓の位置、柱などあとからリフォームしやすいように、最初の設計段階で工夫されているのだ。人々はどうしても足し算で家を発想しやすい。専用の書斎や家事室をほしいという人もいるだろう。場合によっては大型プロジェクターを備えたAVルームを夢見る人もいるかもしれない。しかし、理想は足し算でも現実は限られた空間の割り算でしかない。モデルハウスの見学者たちは、広い家の中を歩きまわりながら、現実とのギャップをかみしめているのかもしれない。